【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





今日、なんだか胸騒ぎがして、無性に柚に会いたくなった。




約束の日ではなかったのだけど、驚かせるつもりで学校まで来た。






そこで聞かされた、柚の現状。





どうして気が付かなかったのか、自分が恨めしかった。





そんなことがあったなんて。





車を走らせること、十数分で柚の家に着いた。





相変わらず人の気配はない。






柚、いるよな…?





インターホンを何度か押すも、人が出てくる気配はない。





ダメか…!




そうだ、優輔に連絡を…






携帯を取り出した、その時。







「あんた、こんなところで何やってんだ。」





聞こえた、思いっきり不機嫌な声。





「君は、確か京輔くん…」





優輔によく似た顔の、あいつの弟だとすぐに思い出せた。





「京輔くん、柚の様子がおかしいんだ。」





どうにかならないか、と聞こうとした途端。





ヒュ…!


パシッ!






無言で飛んで来た拳を、反射的に手首を掴んで受け止める。






「…どういうつもり。」





ぐぐぐ、と力任せに俺を殴ろうとする手を、力づくで押さえ込みながら彼を睨んだ。





「あんた、柚に何をした!」





ギロッと怒りのこもった目で、負けじと睨み返す京輔くん。







「俺はなにもしてないよ。今日は柚の友達にずっと学校に来てないと言われたから、様子を見に来ただけだ。」





「柚に友達…!?デタラメ言うんじゃねぇ!!」





デタラメなんて言ってない。





何故頑なに俺のせいだと思っているのか、さっぱり想像がつかなかった。






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