【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「ところで俺、柚姫ちゃんのこと何も知らないんだよね。年いくつなの?」
と、暁くんが美味しそうなサンドイッチを口に運びつつ尋ねる。
あたしは、ボードに“16”という数字を書き込んで見せた。
「へぇ、16歳なんだ。ってことは、高校2年生ってとこ?」
ティーカップに角砂糖を入れながら、こくりと頷く。
ぽちゃん、ぽちゃんっ、と馴染みの音がなった。
スプーンで混ぜると初めはガリガリいっていたものの、やがては完全に溶け優雅な香りと湯気が立ちこめた。
冷めないうちに、と口へ運ぶ。
その瞬間、驚くことになる。
すごく美味しいのだ。
口に入れた瞬間に香る、ほのかなミルクと優しい茶葉の香り。
そして贅沢で温かな甘味が、あたしの舌を包み込む。
「ね?美味しいでしょ」
いつのまにか、楽しげにあたしを見ていたらしい暁くんはこれでもか、というくらいカッコいい顔で微笑みかける。
あたしは、顔が赤くならないうちに頷いて早急に顔を伏せてしまった。