【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
嫌われちゃうのかな…?
最悪の光景を思い浮かべ、ぎゅっと唇を噛んでうつむいたときだった。
ふわり、と優しい体温に包まれたのは。
驚いて身動ぎをしようとしても、がっちり回された腕によってそれは叶わなかった。
暁くんに抱き締められてる、それがわかった時には固くなった身体から力が抜ける。
「…ごめん、柚。そんなことがあったなんて知らなかったんだ。俺を信じて、話してくれて、ありがとう…。」
暁くん…。
ああ、あたしは何を疑っていたのだろう。
暁くんのこと、信じるって決めたのに。
あたしを包む腕に力が込められる。
「それと今までも、ごめん。何も知らないくせに柚の声で好きと言ってほしいなんて、軽率だった。バカだな、俺。」
自分を責めるような物言いに、あたしは考えるまでもなく首を振っていた。
だって、ずっと黙っていたのはあたしだから。
暁くんは悪くない。
「柚、聞いて欲しいんだ。」
暁くんの甘い声が、耳をくすぐった。
「…ごめんね。今から、ひどいことを言う。あの話を聞いて柚が何を背負わされているのかよくわかった。けど、やっぱり柚には笑っていて欲しい。出来れば、声も。」
ドクリ、全身が心臓になったみたいに脈打った。
「確かにあの事故は君が招いてしまったことかもしれない。だからって、君が親友を殺したわけじゃない。」
違うよ、あたしが…
あたしが居なければアキちゃんは、アキちゃんは…っ!