【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
くら…っ
あ、れ……?
突然、視界がくらりと回った。
「…柚?柚!!」
暁くんの声が遠くで聞こえたような気がしたけど、あたしは意識を手放した。
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「…暁さん、もう遅いし帰っていいっすよ。」
「いや、柚が起きるまでいるよ。」
…だれ?
「そうっすか。」
「…今までみたいに話せば?気にしないけど、俺。」
「いや、一応年下っすから。前までの物言いについては謝ります。」
「いいのに。それにしても、良くできた弟さんだね。優輔も見習えばいいのに。」
「…どーも。」
この声は、暁くんと京ちゃん…?
「柚、泣いたんすか。」
「見てたの?」
「いえ、目ぇ赤いから。相当泣いたでしょ、これ。」
「うん。約三年分、ってところかな。」
「へぇ。ってことは柚はあの事を話した、と。」
「うん。全部聞いたよ。柚の親友のことも、事故のことも。」
「そうっすか…。」
「かなり、ひどいよね。相当苦しんだみたいだ。どうして君は守ってあげなかったの?好きなんでしょ、柚が。」
え……?
「…手は尽くしましたよ。でも、あん時の俺はまだ中2のガキで、兄貴は高2で。周りを黙らせて柚を守るほどの力は無かった。」
京ちゃん…
「言い訳にしかならないけど、柚がなにもするなって言ったんです。人殺しを荷担するって、俺らまで責められるからって。」
「柚が…?」
「俺、最低っす。そう言われて、怖じ気づいた。周りから責められるのが怖くて、周りに反抗しなくなった。」