【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「君の幼なじみ君は、なかなか疑り深いね。」
くす、と微かに笑う暁くん。
意味を尋ねようと首をかしげてみせると、暁くんの優しくて大きな手が頭に乗った。
「ごめん、何でもないよ。ほら、横になって。まだ熱は下がってないみたいだし。」
言われて、大人しく布団に潜る。
「柚、少しは気持ち変われた?」
気持ち、というのはあたしの罪の意識へのものだろうか。
確かに、気持ちはすごく軽くなれた。
でも、根本的なところは変われてない。
あたしがあんなことしなければ。
あたしが友達じゃなければ。
あたしが、居なければ。
あの事故は起こり得なかったのだから。
きっと、死んでいたのはあたしだったから。
そしたら、アキちゃんが死ぬことも無かった。
でもあたしの辛さをわかってもらえて、嬉しかった。
罪が消えたわけじゃないけれど、救われたと思う。
だからあたしは、控えめながらも頷いた。
「そっか。じゃあ今はいい。けど元気になったら俺の為に笑ってくれる?」
ストレートな暁くんの言葉に、頬が火照った。
それから口を閉じたまま、きゅっと口角を少し上げて頷く。
暁くんも嬉しそうに微笑んで、あたしの頭を撫でてくれた。
あたし、あたしらしく生きてもいいんだよね?
笑っていいんだよね?
泣いていいんだよね?
暁くんと一緒にいてもいいんだよね?
せめてアキちゃんを死なせてしまった罪滅ぼしに、声は無くしたままで生きていく。
想いを伝えることもしない。
ただ、普通に生きる権利だけを許してもらえるなら。
…ゴメンね、アキちゃん。