【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「そうそう。君の友達の優輝ちゃん…だっけ?その子が心配してたよ、君のこと。」
え、優輝ちゃんが…?
「守ってあげられなかったって、泣いてた。俺に君のこと教えてくれたのもあの子。」
嘘…
優輝ちゃんはまだ、あたしのこと友達だと思ってくれてる…?
「ほら、俺以外にもいるじゃないか。君のそばにいて、君のことを想ってくれる人。京輔くんだって、そんな1人のはずでしょ。」
「…っ」
「柚は1人なんかじゃないよ。これからももっと、そんな人がたくさん出来るよ、きっと。」
ああ…
さっきあんなに泣いたのに、また涙が溢れてきて。
布団に顔を埋めて、すすり泣いた。
布団の上からもわかるほど優しい、暁くんの手が頭を撫でていてくれた。
***********
それからすぐにお盆を持った京ちゃんが部屋に入ってきて、暁くんはそのタイミングで家に帰った。
また明日来るよ、そう優しく微笑んで。
京ちゃんも、あたしがお粥を食べ終えるのを見計らって家に帰った。
京ちゃんが作ってくれたお粥は、ちょっぴり塩辛かったけど、すごく美味しかった。
とても、温かかった。
その日あたしは、久しぶりにゆっくり眠りについた。
そしてすごく久しぶりに、いい夢を見られた気がする。
あるはずのない、夢輝くステージの夢を。
そう、あるはずのない幸せを…。