【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
自然と眠りから覚めて目を開けると、窓の外はすでに明るかった。
カーテンの隙間から、柔らかい朝陽が漏れる。
目覚まし時計の時刻を確認すると、いつも起きる時間の30分前だった。
もう一度目をつぶってから深く深呼吸して、ゆっくり起き上がる。
体調は悪くない。
むしろ、好調なくらいだ。
昨日の不調が嘘のように身体が軽い。
これも、暁くんと京ちゃんのお陰だ。
部屋のカーテンを勢いよく開け放つ。
差し込む朝陽の眩しさに目を細めてから、ぐーっと身体を伸ばした。
こんなに清々しいのは、いつ以来だったかな。
…無理だとわかっていたのだけど、試さずにはいられなかった。
そっと口を開く。
昔のように、喉に力をいれてみる。
けれど、やっぱり。
…だめ、か。
まぁわかってはいたし、当然と言えば当然なんだけど。
暁くんはあたしのしがらみを断ち切ってはくれたけど、罪自体は無くなったわけじゃないし、それは彼にはどうしようもないもの。
ああ、あたし何やっているんだろう。
思わず自分自身にふっと嘲笑し、学校へ行く準備を整えた。
時間はたっぷりあったから、朝に紅茶を飲む余裕さえあった。
いい香りのするレモンティーをゆっくり味わってから家を出た。
外に出たのすら久しぶりだ。
いつも通りなのに、この道がなんだか新鮮に感じられて、ワクワクしてた。
今までにない、穏やかな気持ちだった。