【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
それからは、暁くんと他愛無い話で盛り上がった。
盛り上がった、というのは大げさな表現かもしれない。
だけど、暁くんは上手に話の流れを作って、あたしが文字やジェスチャーで答えやすいようにしてくれた。
学校のこと。今流行りのもののこと。どうでもいいような、だけど面白い話。
そして、暁くんのこと。
暁くんはこの街の大学に通う、大学生らしい。
そして今は大学の仲間と“Rain”(レイン)という名前のバンドを組んでいて、今日のように度々集まって練習するのだという。
ちなみに暁くんは、ベース担当。
暁くんの口から紡ぎだされる声や言葉は、まるで魔法みたいに器用にあたしを楽しませてくれた。
気付けば既に時計は2時すぎを示していて。
そろそろ出ようか、という話になった。
「けっこう時間たってたね」
確かに、物凄く時間が早く感じた。
こんなにお喋りが楽しかったのは、ひさしぶりだったからっていうのもあるかもしれない。
今日は暁くんに感謝しなくちゃね。