【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…柚ちゃん、おはよ。」
涙に濡れた声で優輝ちゃんは静かに言うと、身体を離していつもの笑顔を浮かべた。
あたしもいつものように笑って頷く。
そして、一緒に笑いあった。
優輝ちゃん、あたしの大切なトモダチ。
もう、失わない。
もう間違わない。
あたしは、あたしらしく生きるよ。
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その後、渚ちゃんと麻佑ちゃん、真波ちゃんも登校してきていつものように笑いあった。
3人は単に、あたしが風邪で休んでたと思ってたみたい。
純粋に体の心配をされたから、風邪ということにしておいて“もう大丈夫”と笑っておいた。
それからは、心配していたのが嘘のように以前となんら変わらない1日を過ごした。
授業を受けて、合間合間にしゃべって。
そう、3年前のような生活が戻りつつあった。
暁くんと出会う前のあたしじゃ、信じられないような変化だ。
暁くんと会ったことで、確実にあたしのなかで何かが変わっていたの。
そう、忘れてはいけなかった、大切なモノを。
「柚ちゃん、行こっ。」
優輝ちゃんの呼ぶ声に、あたしは笑顔で駆け寄った。