【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






「え…?」





突然笑いだした俺に、彼女は目を丸くした。





「…くくっ、はははっ…、なにそれ本気で言ってるの?…っくく…。だとしたら、こんな面白い見せ物はないな。」






途端に、今まで必死な様子だった彼女の表情は凍った。





その姿がまた滑稽で、口元が笑みを浮かべる。






「この際だから言っておくけど、君なんかよりも俺の方がよく柚を見てる。君たちが柚にぶつけた、道理のかなわない怒りすら受け入れて健気に背負い込んじゃうような、お人好しな子だよ。」






「ち、違うわ、あの子はホントに人殺しだもん!!知らないだけだわ、あの子のこと!」





春日井 桃佳はようやく声を発し、震える声でいい放つ。






「だから知ってるって言ったはずだけど。」






「あの子はあたしの友達を殺したんだから!」





「違うよ、あれは不慮の事故だ。」






「事故でも柚が原因なのに変わりはないわよ。あの女さえいなければ、瑛は死ななかったのに!」





「…自分の友達のままだったのに、って?」





「!!」





彼女が息を飲んだのが、はたから見ても丸わかりだった。






「アンタ、どこまで知って…」





もう素がでている、ということに彼女は気付いているのだろうか。





「話というのは他でもない。宮寐 瑛ちゃんが亡くなったことで柚を責めるのはもう、やめてあげてくれないか。」





柚は今までたくさん苦しんだはずだ。




もう、許されてもいいはずだろう。






「そう、アンタ…その事をわざわざ言いに来たわけ?」





「それ以外に、何があるの?柚はもう十分苦しんだ。これ以上彼女を責める権利は君にはない。」





きつく、真正面の女の子を睨み付ける。





これで柚が救われるなんて思っちゃいないが、少しずつでいい。




少しずつ、彼女を守っていけば。








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