【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
♪ サプライズ大作戦!
「遅いねぇ、暁さん。」
そうだね、と優輝ちゃんの言葉に頷く。
お昼ころに暁くんから体調を気遣うメールが届き、学校にいると返したらすごく驚かれたし、心配された。
もう大丈夫ということを懸命に説明すると、今日も迎えに行くから待っててと返ってきた。
ただ、ちょっと用事があるから少しだけ遅くなるって。
いつもなら遠慮してるとこだけど、今日はちょっと事情が違うから大人しく待つことにした。
その事情というのが今日は例の木曜日、暁くんのバースデイだということだ。
みんなが準備している間、時間まであたしが暁くんを捕まえていて、リコールへ連れていく。
そういう計画だった。
ちゃんと、優輝ちゃんに一緒に見てもらったプレゼントもある。
そのために、今は優輝ちゃんと教室でなかなか来ない暁くんを待っていた。
暁くんが言う用事が、一体どんなものなのかも知らずに。
「柚、食べる?」
優輝ちゃんは笑ってポケットから出したチョコレートを、差し出した。
“食べる。ありがとう”
口パクで言ってそれをもらうと、やっぱりチョコは全然溶けてない。
むしろ、冷えててカチカチだ。
“どうしていつも、いろんなお菓子出てくるの?溶けないの?”
思いきって聞いてみると、優輝ちゃんはニヤリと笑った。
「ふっふっ、ようやく聞いてくれたね。でも残念!秘密を教えるわけにはいかないのですよ。これは泉堂優輝七不思議のひとつでね、聞いてしまうと…」
優輝ちゃんは、そこで詰まる。
目に見えて、焦っていた。
ああ、考えてなかったんだなと苦笑する。
“うん、聞かない。”
優輝ちゃんは、ホッとした顔をしてチョコを口に放り込んだ。