【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「そんなある日、あたしの親友は突然…死んだの。」
え…?
「自殺だった。原因は、イジメ。それもすごく悪質だったんだって。クラス全員が、イジメに関わってたらしい。」
そんなことが…
「知らなかった。あたし…あの子の親友だったのに、苦しんでたの、気付けなかった…。」
ポロポロ、と優輝ちゃんの頬を涙が伝う。
「あたしが気付けないまま、あの子は首を吊って…。っ…、苦しかっただろうな、痛かっただろうなって、何度も、何度も…っ」
優輝ちゃん…
「一番近くにいたのは、あたしだったはずなのに…誰よりも、大切な親友だったのに…」
優輝ちゃんの後悔っていうのは、友達を救えなかったことだったんだ…
「それからすぐに、遺書が出てきたの。ご両親への謝罪とイジメのこと、それからあたしへの手紙も。」
手紙…?
「最初は、どうして助けてくれなかったのっていう恨みの文面かと思ってた。けど、全然違くて。ただ、ずっと友達でいてくれてありがとうって。あたしのこと忘れないでね、見守ってるよ。だから、自分を責めないで、たくさん友達作ってねって。」
ああ…その子は優輝ちゃんのこと…
「だからあたし決めたの。もう後悔しないように、友達を守るって。あの子が、見てるから。」
いつの間にか優輝ちゃんの涙はひいていて、力強い光が目に宿っていた。
優輝ちゃんは辛い過去を背負っていても、前向きに生きてるんだ。
彼女の意志を、守るために。
あたしとは違う形の、償いをしてるんだ。
「だから、柚を守れなかったときすごく辛かった。また、友達がいなくなってしまったらって…。」
“優輝ちゃんは守ってくれたよ。”
「柚…」
“優輝ちゃんと暁くんのお陰で今あたしは、ここで笑っていられるから。だから、ありがとう”
ボードの文字を見せてからニッコリと笑うと、また目に涙を浮かべた優輝ちゃんは、少し苦しいくらいの力であたしを抱き締めてくれた。