【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐






そういうカタチの償いもあるんだね…。





ねぇ、アキちゃん。





あたしって、ちゃんと償えてる…?









「あ!あの車…暁さんじゃない?」




え?





あたしも窓の外を見てみると、見慣れた車が校門の前に停まっていた。






“そうみたい。優輝ちゃん、大切な話を聞かせてくれてありがとう。”





「うん。あたしこそ、暗い話を長々と続けてごめんね。」





“そんなことない。聞けてよかった。”




「ありがと、柚。ほら、早く行っておいで。」




“またね。”





「ん。また明日…あ!待って待って!!」





鞄を背負ったあたしを呼び止め、ガサガサとポケットをまさぐる優輝ちゃん。





そうして、出てきたものをあたしに向けて投げた。





うまくあたしの手の中に収まったそれは、キャラメルだった。




「あげる。あたしの幸運のキャラメルなの。」






幸運?






「それを食べると、良いことがあるかもしれないよ。」





ぱちっとウィンクを飛ばした優輝ちゃんに、ありがとうと口パクで言って、今度こそ教室を出た。





暁くんが待つ、車まで小走りで。








***********







「お疲れ様、柚。」




車から降りた暁くんは、優しい笑顔を向けてくれた。





そしていつものように、助手席を開けてくれる。





そして、車に乗り込んでからの第一声は。






「今日は一段と可愛いね、柚。ドキドキするよ」






ドキッと心臓が跳ねたのが、わかった。





そんなことを言われて、ドキドキするのはあたしだよ…っ





「それ、俺の為にしてくれたんでしょ?嬉しいな。よく似合ってるし、すごく可愛い」





そう言って、綺麗に巻かれたあたしの髪を一束弄ぶ暁くん。




そう、あたしは今髪を巻いたりメイクしたりと、精一杯オシャレをしたのだ。




これはすべて優輝ちゃんがやってくれた。





制服というのは味気ないけど、まあしょうがない!!

ヘアメイクだけでも、完璧にしてあげるから!





張り切っていた優輝ちゃんの姿を思いだし、小さく笑う。








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