【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
そういうカタチの償いもあるんだね…。
ねぇ、アキちゃん。
あたしって、ちゃんと償えてる…?
「あ!あの車…暁さんじゃない?」
え?
あたしも窓の外を見てみると、見慣れた車が校門の前に停まっていた。
“そうみたい。優輝ちゃん、大切な話を聞かせてくれてありがとう。”
「うん。あたしこそ、暗い話を長々と続けてごめんね。」
“そんなことない。聞けてよかった。”
「ありがと、柚。ほら、早く行っておいで。」
“またね。”
「ん。また明日…あ!待って待って!!」
鞄を背負ったあたしを呼び止め、ガサガサとポケットをまさぐる優輝ちゃん。
そうして、出てきたものをあたしに向けて投げた。
うまくあたしの手の中に収まったそれは、キャラメルだった。
「あげる。あたしの幸運のキャラメルなの。」
幸運?
「それを食べると、良いことがあるかもしれないよ。」
ぱちっとウィンクを飛ばした優輝ちゃんに、ありがとうと口パクで言って、今度こそ教室を出た。
暁くんが待つ、車まで小走りで。
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「お疲れ様、柚。」
車から降りた暁くんは、優しい笑顔を向けてくれた。
そしていつものように、助手席を開けてくれる。
そして、車に乗り込んでからの第一声は。
「今日は一段と可愛いね、柚。ドキドキするよ」
ドキッと心臓が跳ねたのが、わかった。
そんなことを言われて、ドキドキするのはあたしだよ…っ
「それ、俺の為にしてくれたんでしょ?嬉しいな。よく似合ってるし、すごく可愛い」
そう言って、綺麗に巻かれたあたしの髪を一束弄ぶ暁くん。
そう、あたしは今髪を巻いたりメイクしたりと、精一杯オシャレをしたのだ。
これはすべて優輝ちゃんがやってくれた。
制服というのは味気ないけど、まあしょうがない!!
ヘアメイクだけでも、完璧にしてあげるから!
張り切っていた優輝ちゃんの姿を思いだし、小さく笑う。