【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「どうしたの?」
“これ、優輝ちゃんがやってくれたの。すごく張り切ってたから、可笑しくって”
「ああ、彼女が。感謝しなきゃね、俺のお姫様をこんなに綺麗にしてくれたんだから。」
そう蠱惑的に微笑すると、指に絡めていたあたしの髪にそっと口づけた。
ひゃああっ!?
その光景があまりに色っぽくて、あたしの頭は爆発寸前になる。
しかも、お姫さまって!?
まるで髪の毛一本一本に神経が通っているかのように、彼の動きに敏感に反応する。
やば、顔熱い…
「じゃあ俺も、彼女の努力を無駄にしないように仕上げを手伝うよ。」
クス、と笑った暁くんの顔を間近で見て、あたしはノックダウン一歩手前だった。
そうして連れて来られたのは、オシャレで可愛い洋服屋さん。
店内は、女の子らしさで溢れていた。
「すみません。」
「はーい、あっ…」
暁くんが店員さんに声をかけると、愛想よく振り向いた店員さんは途端に顔を赤らめる。
じろじろ見つめる店員さんに構わず、極上の笑顔で暁くんはあたしの肩に腕を回して軽く抱き寄せた。
「この子に、似合うものを持ってきてください。上から下までコーディネートは任せます。」
「は、はいっただいまお持ちします!」
そう言うや否や、店員さんは小走りで店の奥に消えていった。
今こういう状況になっているのは、暁くんが言い出したことがきっかけだ。
せっかく俺のために綺麗にしてくれたのだから、制服のままでも十分だけど、やっぱり完璧にしようか。
そんな提案で、こういうわけだ。
それなら着替えを取りに家に行く、と言ったのだがプレゼントさせてほしいな。と言われてしまった。
今日は暁くんの誕生日だから、普通プレゼントするのはあたしのはずなのに…と思ってもサプライズなのだから言えない。
結局、押しきられる形でこうしているわけなのだけど…。
やっぱり、落ち着かない。