【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「どうしたの?」




“これ、優輝ちゃんがやってくれたの。すごく張り切ってたから、可笑しくって”




「ああ、彼女が。感謝しなきゃね、俺のお姫様をこんなに綺麗にしてくれたんだから。」




そう蠱惑的に微笑すると、指に絡めていたあたしの髪にそっと口づけた。




ひゃああっ!?




その光景があまりに色っぽくて、あたしの頭は爆発寸前になる。


しかも、お姫さまって!?



まるで髪の毛一本一本に神経が通っているかのように、彼の動きに敏感に反応する。




やば、顔熱い…




「じゃあ俺も、彼女の努力を無駄にしないように仕上げを手伝うよ。」




クス、と笑った暁くんの顔を間近で見て、あたしはノックダウン一歩手前だった。










そうして連れて来られたのは、オシャレで可愛い洋服屋さん。



店内は、女の子らしさで溢れていた。




「すみません。」




「はーい、あっ…」





暁くんが店員さんに声をかけると、愛想よく振り向いた店員さんは途端に顔を赤らめる。




じろじろ見つめる店員さんに構わず、極上の笑顔で暁くんはあたしの肩に腕を回して軽く抱き寄せた。




「この子に、似合うものを持ってきてください。上から下までコーディネートは任せます。」





「は、はいっただいまお持ちします!」





そう言うや否や、店員さんは小走りで店の奥に消えていった。



今こういう状況になっているのは、暁くんが言い出したことがきっかけだ。




せっかく俺のために綺麗にしてくれたのだから、制服のままでも十分だけど、やっぱり完璧にしようか。




そんな提案で、こういうわけだ。




それなら着替えを取りに家に行く、と言ったのだがプレゼントさせてほしいな。と言われてしまった。





今日は暁くんの誕生日だから、普通プレゼントするのはあたしのはずなのに…と思ってもサプライズなのだから言えない。





結局、押しきられる形でこうしているわけなのだけど…。





やっぱり、落ち着かない。









< 283 / 450 >

この作品をシェア

pagetop