【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「お会計お願いします。」
「ははは、はい!1175円です…。」
えっ…!
あたしは、ごく当然のようにお金を払おうとしている暁くんの袖を軽く引っ張った。
「ん、何?どうかした?」
相変らず不思議そうな顔の暁くんに、ふるふると首を振ってみせる。
「お金のこと?」
これだけで、何故か理解してくれる暁くん。
あたしは頷いて、ボードに
“あたしが払う”
と書く。
それを見て暁くんは驚いた。
「え?どうして。いいよ、ここは俺が払うから」
“だってさっき助けてもらったし。お礼としてあたしが払う”
「そんなこと、気にしなくてもいいの。女の子におごってもらうつもりはないから安心して。」
そうして、結局暁くんにごちそうになってしまった。
申し訳ない気持ちでいっぱいになりながら、ボードに言葉を書く。
“ありがとう。ごちそうさまです。”
「どういたしまして」
暁くんは、にっこりと笑った。