【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐



「ゆ、柚?どうしたの?」



困惑する暁くんをよそに、グングン腕を引っ張って行く。



お店の重い扉を開け放ち、その中に暁くんを無理やり押し込んだ。




中は真っ暗で、いつものリコールではないようだった。




「柚?ホントにどうしたの?俺は別に用事は…」



“いいからいいから。早く中へ入って?”



あらかじめ用意していた言葉を見せ、ニッコリと笑いかける。



「わかったよ。」



すると暁くんは困った顔をしつつも笑って、ゆっくりと階段を降りて行く。



階段を降りきったところで、暁くんが再び口を開く。



「柚、それで一体なにが……」



その時、突如パッと電気がついて、眩しさに目を細める。



そして…。




パンっパンパンッ!!



『アキ!誕生日おめでとうー!!』




弾けるクラッカーの音、そしてみんなの声が響き渡る。




「え……?」




暁くんは、降りかかるクラッカーの紙吹雪を払うことも忘れ、呆然とその光景を見ていた。




まるで子供のお誕生日会のように、きれいに飾り付けられたお店、天井から下げられた“HAPPY BIRTHDAY!アキ”と書かれた横断幕、豪華なごちそうに、大きなケーキ。



ちょっとやり過ぎなような気もしたけれど、この方がみんならしいと思った。




「え…誕生日って…どうして…」



“沙夜ちゃんに聞いたの。”



あたしがボードを見せると、暁くんはようやく少し納得したよう。




「…ああ、そうか。今日は……」



え?もしかして暁くん…




「まさか、誕生日忘れてたとか?」



同じタイミングで、優兄が問いかける。



「ああ、忘れてたよ…。」





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