【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
ふっ、と笑った暁くんの表情はどこか寂しげだった。
「じゃあ、サプライズ成功だな。これ、柚姫ちゃんが言い出したんだぜ?」
「柚が?」
原田さんの言葉に、暁くんは振り返る。
頷くと、暁くんは微笑んだ。
「そっか、ありがとう。」
でもその微笑みが、なんだかいつもと違うような気がして、あたしは不安を覚えた。
もしかして、嬉しくなかった…?
「みんなもありがとう。すごく嬉しいよ。」
「どういたしまして。腹へっただろ?たくさんあるから食えよ」
そう笑った愁生さんは、その小さな異変には気付いてなかったようだった。
「ああ、お腹ペコペコだったんだ。美味しそうだね。」
「…お酒も、あるから。」
「まだお前だけはは未成年だからダメだろ。あと柚姫ちゃんも、ないとは思うけどだめだぞ。」
「…ケチ。あと、2ヶ月ちょいなのに。」
原田さんに釘をさされた李織さんは、すねたように顔をしかめる。
みんないつも通りだ。
「じゃあ、早速。カンパーイ!」
カンパーイ!と一同の声が上がり、グラスのぶつかり合う音が響く。
未だ、暁くんはどこかいつもと違う気がしたけれど、あたしの考えすぎなんだと思うことにした。
それでも拭いきれない不安は、確かにあたしの中で大きく膨らみつつあったんだ…。