【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
サプライズパーティーは大いに盛り上がりどんどんお酒も進み、終盤にはみんな出来上がって夢の中だった。
飲むな、と言われていた李織さんは大人しく飲まなかったけれど、もう遅い時間だからといつものようにソファーで丸くなって寝ている。
起きているのは、実質あたしだけだ。
みんなに毛布をかけ、せっせと後片付けをする。
そんなとき、暁くんがいないことに気が付いた。
いつからいなかったんだろう。
そう言えば、みんながぐでんぐでんに酔って寝始めた頃にはいなかった。
その時はトイレにでも行ってるのだろうと思ったけれど、それにしては長すぎる。
あたしはそっとお店のドアを開けて、外に出た。
月明かりに照らされた夜道に、彼はいた。
真っ直ぐ背筋を伸ばし、遠く月を眺めている彼が。
その横顔はどこか儚く、今にも消えてしまいそうにさえ見えた。
「…どうしたの?柚」
ドキッと心臓が跳ねた。
一度もこっちを見ていないのに、どうしてあたしだとわかったんだろう。
「そんなところにいないで、こっちへおいでよ。」
その言葉に甘え、ゆっくりとした足取りで暁くんの隣に立つ。
けれど、いくら待っても暁くんは無言で。
そっと横顔を盗み見る。
月明かりに照らされた暁くんの顔は本当に綺麗で、思わず見惚れてしまうほどだった。
長い睫毛が頬に影を落とし、柔らかそうな茶髪はさわさわと夜風に揺れていた。
「…風が、気持ちいいね。」
にこ、と笑った暁くんはあたしに視線を向ける。
見ていたことはバレバレで、言い訳することもなく、素直に頷いた。