【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
偽物…なんて……
「…ごめんね、こんな話して。酔ってるのかな」
ふるふると首を振った。
それを見て、ふわりと優しく微笑む暁くん。
「これは本心だ。…嬉しくなかったわけじゃない。素直に喜んでよかったのか、わからなかった。」
自分の生きていることに負い目を感じているから、だから素直に喜べない。
暁くんは、一体何を背負っているの?
暁くんの背負うものを、軽くしてあげたい。
あたしにしてくれたみたいに。
「…でも、懐かしかった。あんな誕生日は、両親が亡くなって以来だったから。」
“どうしてイギリスの家の人たちは、祝ってくれなかったの?”
「ん?それは、…俺があの家の人間にあまりよく思われてないからだよ。不幸を呼ぶから、って疎まれてる」
そんな…!
その時、はっと思い当たった。
暁くんのお兄さんであるエドガーさんが、暁くんのことを“疫病神”と言っていた。
それが何か関係あるのだろうか。
「俺は、不幸を呼ぶから。だから両親はあんな死に方したんだって。」
あんな、死に方…?
暁くんは、堪えきれないように重い息をゆっくりと吐き出して、静かに口を開いた。
「…強盗に、殺されたんだ。その時俺は8歳で、沙夜はたった4歳だった。」
「…!!」
まさかの言葉に、思わず息をのんだ。
「そんな俺たちを引き取ってくれたオルドリッジ家には恩がある。逆らえないんだ。」
真っ直ぐにあたしを見つめる暁くんの瞳が月明かりに揺れていた。
嫌な予感は、徐々に確かなものへとなっていく。