【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
もしかしたら、暁くんは…。
「ごめんね、柚…」
寂しげに微笑む暁くんに、ツンと鼻の奥が痛くなった。
暁くんは、いつかイギリスに帰ってしまうの?
もう、逢えないの?
でもそんなことは、怖くて聞けなかった。
…嫌だよ。絶対いや。
「今日はありがとう。幸せだった。」
最後みたいに言わないで…。
“来年も、祝うから。その来年も、そのまた来年も、毎年絶対に祝うから!!”
「柚…」
“暁くんは不幸を呼ぶ存在でも、偽物でもない!!だって、あたしのことこんなに幸福にしてくれたもん!!毎日楽しいもん!!”
そう。暁くんがいなきゃ、あたしは永遠にひとりぼっちだったかもしれない。
暁くんがみんな思い出させてくれた。
友達の大切さ、誰かを想う気持ち、笑うこと、涙を流すこと。
全部!!
“愁生さんだって、李織さんだって優兄だって原田さんだって、きっとそうだもん!!”
暁くんはわずかに眉を寄せて、あたしの頬を撫でてから額にそっと口づけた。
「…ありがと、柚。俺にとって、君こそが幸せの源だよ。」
暁くん…。
ゆっくりと離れた暁くんの前に、ラッピングされた小さな箱を 差し出す。
「柚、これ…」
“プレゼント。開けてみて?”
丁寧に開けられた包みの中から、一生懸命選んだシルバーのペンダントが光った。
「これを、俺に…?」
“うん。似合いそうだなって思って。見て、ドクロの目、紫のストーンが入ってるの。”
「…え?」
“綺麗でしょ?これに惹かれて買ったの。”
「…どうして、君は…―――。」
え…?
「何でもない。ありがとう、大切にするね。」
月が雲に隠れてしまったせいで表情は見えなかったけれど、暁くんは今にも泣いてしまいそうな顔をしていたような気がした…。