【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
アキちゃんと一緒じゃなきゃ歌わない、歌いたくない。
それは、心からの言葉だった。
「あたしの歌ほど、アキちゃんの音を引き立てるものはないんですよーっだ。」
「なにそれ、自信家」
あたしがそう言うと、可笑しそうにアキちゃんは笑った。
「じゃ、あたしのギターも柚の歌を引き立てるためにある。二人で一つの音だね」
「うんっ!」
アキちゃんも、ちょっと照れ臭そうに笑ってそう言ってくれた。
「絶対、一緒にデビューしよう!」
「ずっと一緒に、音楽やろうね。」
互いの小指を絡ませ、固く誓ったあたしたち。
『約束っ!』
二人の声が空に吸い込まれ、二人して顔を見合わせて笑った。
そんな時だった。
ビュウウゥゥウウ!
すごい突風が吹き荒れて、あたしたちを襲ったのは。
「きゃあっ」
あたしたちは、飛ばされないように踏張るのが精一杯だった。
それからすぐ、突風は収まった。
だけど…。
「きゃあっ!歌詞が!」
一瞬気を抜いたあたしの手から、一生懸命考えた歌詞の紙が離れて行ってしまったのだ。
「どうしよう!待ってー!」
馬鹿みたいに青い空を見上げ、あたしは必死に追い掛けた。