【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
……ミーンミンミンミン…
青い空、大きな白い雲にうるさい蝉の声。
季節はもうすっかり夏だ。
ああ、暑い…
あたしは暑さで火照った顔を、ノートで仰いだ。
「明日から夏休みだ喜べお前らー。ハメを外しすぎないように遊べ。あと宿題は溜めないで上手くやれよ!以上!」
先生らしからぬ担任の台詞に、思わず苦笑いを浮かべた。
この先生はいつも適当だ。
けれど生徒が困ったときなんかは全力で力を貸してくれる、いい先生でもある。
生徒に人気のある先生だ。
「ねぇ柚っ!夏休み、どこか遊びに行こうよっ!」
そう声をかけてきたのは、優輝ちゃんだった。
特に予定もないので頷くと、優輝ちゃんは、よっしゃー!と大きくガッツポーズ。
夏休み、楽しみだなぁ。
きっと暁くんのことだから、夏休みだからと色んなところに連れていってくれるんじゃないかな。
また水族館、行きたいなぁ。
輝かしい夏休みの日々を思い浮かべて、今から楽しみで仕方がなくなった。
「じゃあ空いてる日あったら教えてね!」
うん、と頷いたところで彼氏の結翔さんが迎えに来てしまった。
「バイバーイ!」
手を振り返すと結翔さんと手を繋ぎ、仲良く教室を出ていった。
さて、あたしもそろそろ行かなきゃ。