【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




『ぶっきらぼうで何を考えているのかわからない人だけれど、芯は温かくてすっごく優しい人なの。彼のあれは、彼なりの優しさなのよ。誰かを想う故の空回り。変でしょう?』




『ふぅーん…?』





その時はよくわからなかったけど、今ならなんとなくわかる。




父は、変な人だ。





自分でそう思って、思わず可笑しくなった。




違った、不器用な優しさの塊の人。



ベットに潜り込んだあたしは、心から鉛がまた一つ、取れたような気がしていた。









そうして、あたしはその数日後。




長年住み続けた家を出た。





お父さんが探してくれたマンションはキレイで、オートロックに防犯カメラのある防犯に力を入れたところだった。




それに実家にも近く、いつでもおいでとお父さんと佐々原さんは言った。




たまには、顔出しするくらいいいよね…?





ちなみに、これは後日明らかになった事実。



10ヶ月もの間、帰って来てなかったお父さん。



実は、かなり頻繁に帰って来てたらしい。



それも、あたしが寝てしまった深夜だとか学校に行っている間とか。



時間に不規則な仕事のせいでもあるけど、わざとあたしのいる時間を避けていたみたい。




だから、あの日あたしが早く帰ってきてすごく焦ったって言ってた。





やっぱり父は、変な人だ…。









< 324 / 450 >

この作品をシェア

pagetop