【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
『ぶっきらぼうで何を考えているのかわからない人だけれど、芯は温かくてすっごく優しい人なの。彼のあれは、彼なりの優しさなのよ。誰かを想う故の空回り。変でしょう?』
『ふぅーん…?』
その時はよくわからなかったけど、今ならなんとなくわかる。
父は、変な人だ。
自分でそう思って、思わず可笑しくなった。
違った、不器用な優しさの塊の人。
ベットに潜り込んだあたしは、心から鉛がまた一つ、取れたような気がしていた。
そうして、あたしはその数日後。
長年住み続けた家を出た。
お父さんが探してくれたマンションはキレイで、オートロックに防犯カメラのある防犯に力を入れたところだった。
それに実家にも近く、いつでもおいでとお父さんと佐々原さんは言った。
たまには、顔出しするくらいいいよね…?
ちなみに、これは後日明らかになった事実。
10ヶ月もの間、帰って来てなかったお父さん。
実は、かなり頻繁に帰って来てたらしい。
それも、あたしが寝てしまった深夜だとか学校に行っている間とか。
時間に不規則な仕事のせいでもあるけど、わざとあたしのいる時間を避けていたみたい。
だから、あの日あたしが早く帰ってきてすごく焦ったって言ってた。
やっぱり父は、変な人だ…。