【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
…季節は夏をすぎ、もう秋だ。
あんなに青々と繁っていた葉はすっかり赤く色づき、秋の訪れをひしひしと感じさせている。
楽しかった夏も終わり(夏休みは暁くんに色んな場所に連れて行ってもらった)、そろそろ文化祭の時期だ。
というわけで、あたしたちのクラスはなんと喫茶店をやることに!!
毎日その準備に追われている。
「…此花さーんっ、ちょっと来てくれるかなぁっ?」
遠くからクラスメイトの呼ぶ声がし、あたしは駆け足で向かった。
こんな風に毎日、クラスのみんなと協力して準備を進めている。
ちなみにあたしは、メニュー開発担当。
なるべく簡単に、けれど美味しくて見た目もよく、という難しい条件に悪戦苦闘しながらも、着々と準備は進んでいる。
中でも、ストロベリーパフェはクラスでなかなかの好評だった。
簡単だし、美味しい!とみんなが喜んでくれた時は本当に嬉しかった。
けれど、欲を言えば一つ気になることが。
…暁くん、元気かなぁ?
最近、あまり暁くんに会えていない。
文化祭の準備で、放課後まで残っているとリコールに行けないからだった。
原田さんは笑って、楽しんでおいでと言ってくれて。
しばらく顔を出さないことにしたんだけど、暁くんとも会えないと寂しい。
それに、最近の暁くんはなんだかおかしかったから余計に気になる。
上の空っていうか、何か考えているみたいで。
前はすっごく甘やかしてくれていたけど、なんとなく距離も感じていた。
聞きたくても聞けなくて、もどかしい。
会いたい、な…。