【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「柚ー、お風呂ありがと。わぁっお布団!!」
お風呂から上がった優輝ちゃんは、あたしが敷いておいたお布団を見て嬉しそうに声をあげた。
「お布団あったんだね。独り暮らしだから布団ないかと思ってて、ソファーで寝る覚悟してたよー」
なんて、悪戯っぽく笑う優輝ちゃんに思わず苦笑い。
そのあとあたしもお風呂に入って、寝るまでガールズトークに花を咲かせた。
まるで修学旅行みたいで、とても楽しかった。
初めは誰がカッコいいだとか、文化祭で催される美男美女コンクールで誰が選ばれるかとか、そんな話。
話はどんどん広がり、いつの間にか暁くんの話になっていた。
「で、どうなの?今何ヵ月?」
“付き合ってないってば。”
「えぇー、お似合いなのに。柚は好きなんでしょ?暁さんのこと」
おずおずと頷くと、ぱっと笑う優輝ちゃん。
「頑張ってね。信じ続ければ、上手くいくと思うよ。」
“信じるって、何を?”
「自分の気持ちと、暁さんのことだよ。」
信じる、か。
わかったと頷くと、優輝ちゃんはニコッと笑った。
「ところで、最近の進展はどんな感じ?」
興味津々、といった感じだけど残念ながら。
“最近、会ってない”
「あぁそっか、文化祭準備で…。」
まるで自分のことのように落ち込んでくれる優輝ちゃんに、思わず口が綻ぶ。
けれどあたしの心にはすぐに、最近の悩みが顔を出した。
“それになんか最近、変。”
「変、って?」
“なんか、距離を感じる。あたしから距離を取ろうとしてる。”
「まさか、そんなわけ…」