【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「大雑把に言うと、なんか変なんだよなぁ。」
考え込むようにして、よく整えられた顎ひげをさする。
「上手く言えねぇけど、元気がないっていうか…。」
それは、あたしが感じていたものに少し近かったように思う。
けれど、やっぱりどこか違うような気がした。
元気がないのではなくて、…――――。
…やっぱり私も、上手く言えないのだけれど。
“暁くんと話がしたいんですけど、連絡取れないんです。何かご存知ですか?”
「いや?特に何も聞いてねぇよ?直接あいつの家に行ってみたらどうだい?」
直接かぁ…。
“迷惑じゃないですかね?”
「柚姫ちゃんが来てくれたら喜ぶだろうよ。」
本当に、そうなのかな。
もし、暁くんが本当にあたしを避けていたら。
暁くんに、面倒くさがられたら。
さっきからネガティブなことしか考えられない。
「なぁ李織ー。お前はどう思う?」
えっ?
ふいに原田さんが店の奥に置かれたソファに向かって声を張り上げた。
すると、ソファの上の影がもぞりと動く。
「うーん、うるさい。」
その声は確かに李織さんで。
どうやら、最初からそこで寝ていたらしかった。
「あいつな、休日も時々昼飯食いにやってくんのよ。自分で作るの面倒だとか言って。店行ったら金かかるし。」
へ、へぇ…