【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「なぁ李織、お前はどう思う?話は聞こえてたんだろ。」
「…んー、わかんない。」
少ししてから、気だるそうに李織さんは答えた。
「わかんないって、お前友達なのにわかんねぇのかよ。」
「…何も話してもらえないんだから、わからなくても当然でしょ。」
何も話してもらえない…。
李織さんにも話してないんだ…。
「…あんなアキ、嫌いだ。」
李織さん…。
目を伏せて、苦々しげな顔をすると、毛布をすっぽり頭から被ってしまった。
もう話しかけるな、と言いたげに。
「あいつは人の感情の変化には敏感なんだ。自分はあまり見せないくせにな。」
―――あんなアキ、嫌いだ。
そう言った李織さんの表情がいつまでも離れず、いたたまれなくなり原田さんに軽い挨拶をしたのみでリコールを出た。
暁くんの様子が変わったのは、ここ1、2ヶ月のことだった。
毎日のようにリコールに来ていたのに、徐々に回数が減った。(来ても、ほとんど遅刻が多い。)
あたしを学校まで迎えにきてくれていたのに、忙しくなったとあまり来てくれなくなった。
せっかくみんなで集まっても上の空で、あまりみんなの輪には入らないでぼんやりしている。
しまいには、ちょくちょく煙草を吸う姿を見かけている。
二十歳になったのだからいいのだけど、今まで吸っている姿を見たことがなく、違和感を覚えていた。