【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
しかしそれはリコールでの様子でしかなくて、大学での様子はわからない。
李織さんに嫌い、とまで言わせてしまう暁くんの様子を思い浮かべるだけで胸がいたむ。
なんで急に。
なんでなの。
どうしてあたしたちから離れようとするの?
あたしたちのこと、嫌いになっちゃったの?
疑問と不安は、深まるばかりだった。
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それから少しバスに乗って、暁くんのマンションの前にいた。
相変わらず、大きなマンション。
緊張で震えそうになる唇を噛んで、暁くんの部屋番号を入力してインターホンを鳴らした。
しばらくして、スピーカーから聞き慣れた声が聞こえた。
『…柚?来てくれたの?鍵あいてるからおいで』
すぐにカチャ、と鍵の開く音がしてオートロックが解除された。
…あれ?わりと普通?
今までのことは気のせいだったのかと思うほど、いつも通りだった。
けれど、話し方がどこかおかしかったような…。
機械を通したからだろうか。
とりあえず、暁くんの部屋へと向かうことにした。
言われた通り鍵はあいていて、中にはいる。
「…柚」
え?
暁くんの声がしたと思った瞬間、ふわりと何かに視界が遮られた。
それが暁くんで、彼に抱き締められているのだと気付くのに少し時間がかかった。
直後に、後ろでバタン、とドアが音をたてて閉まる。
…暁くん、だよね?
いつもと違う香りに、戸惑いが隠せない。