【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐




暁くんの茶色じゃない瞳が切なげにあたしに向けられていて、とっさの行動ができない。



いつの間にか寝室にいて、ぱふんと柔らかいベットの上に横たえられた。




何を…と考える前に暁くんがベットのスプリングを軋ませて、覆い被さる。




「愛してる、柚。俺を、受け入れて…。」




ドクン、と胸が今までにない程暴れた。




がっちりと両手を押さえられ、動けない。




そんな、まだ心の準備が…。どうし…




「…柚、言って。」




え…?




「俺のこと、好きだって言って。柚の声で…」





あ、暁く…




首筋に触れる、暁くんの熱を帯びた唇の感触が恥ずかしくて顔を背ける。




「言ってくれ…そしたら、俺は………―――」




「……っ」




ズシッ、と暁くんの身体が思い切りあたしの身体にのし掛かってきて、もう無理と覚悟を決めた。




けれど、いつまでたっても暁くんは動かなくて。





そっと下から這い出して、顔を覗き込むとすぅすぅと、寝息をたてていた。





…寝てる。




ホッとして力が抜けるやら、ちょっと残念なような…。




あんな風に、押しの強い暁くんは初めてで、何て言うかドキドキした。




困ったのも本当だけど…。




そんなことよりも。








苦しそうな、つらそうな顔で眠る暁くんの髪をそっと撫でた。



暁くんがどうして変わってしまったのか。



その理由に、ほんの少し触れられたような気がした。




暁くんの誕生日の日に言っていた言葉といい、暁くんは何に苦しんでいるんだろう。




疫病神とか、不幸を呼ぶとか、幸せになっちゃいけないとか。



聞きたいけれど、たぶん教えてくれないよね…。



いつか、話してほしい。








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