【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「…あくまでしらを切るつもりか。」
「だから、何も隠してなんかない。普通だよ、普通。」
「殴るぞ。」
「暴力的な発言だね。けど、俺は殴られたって何も言うことはないし、お前にメリットもない。だから、止めておくんだね。」
「俺のメリット?ちげぇな。親友の為だよ、ばか野郎。」
「…優しいね、優輔。」
「なんだ、殴られたいのか?」
「まさか。やっぱり俺には、お前みたいなヤツはもったいなさすぎるよ」
「はぁ?」
「…優輔、味噌汁が飲みたい。」
「突然話を変えんな、まだ終わってない」
「でもまだアルコール抜けてなくてね。分が悪いから、またにしてくれる?」
「…待ってろ、温めてきてやる。」
なんだ、用意してあるのか。
優輔にしちゃ、ずいぶん気が利くな。
さて、どう言い訳をしようかな。
あの調子じゃ、なかなか引き下がりそうにないし。
ああ見えて頭もいいから、説き伏せるのは至難の技だ。
さて、どうしたものか。
しばらくして優輔は、お椀に湯気をたてる味噌汁を持ってきてくれた。
なんでも、優輔が来てからわざわざ柚が材料を買いに行き、それから慣れた手つきで作ってってくれたのだという。
あさりの味噌汁は、二日酔いに効果的。
わざとそれを選んでくれたのか、たまたまなのか。
あんなことをしたあとなのに、と柚の人の良さと優しさに胸が苦しくなった。
柚、酔いに任せてぶちまけてしまった気持ちを、しらふで直接君に言えないことが残念だよ。