【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
味噌汁を飲み干したあと、再び優輔の追及が始まるかと思ったが、別の追及が始まった。
「お前、柚に何もしてないだろうな?」
…一難去ってまた一難。
もっと風向きの悪い内容だった。
「したんだな?したんだろ」
「……しようとして、意識がなくなった。」
「殴る。いいな?」
「未遂だって言っただろ。」
「正直に言え。何するつもりだった」
「………」
言えるわけがない。
優輔にとって、柚は大切な妹だ。
幼なじみだとしても、血の繋がる兄弟のように思っているはず。
無理だ、言えない。
「言えないようなことをするつもりだったのか。」
「別に何するつもりだったか、なんて一言もいってない」
「だいたい予想できる」
「…完全に酔ってる時に好きな子が目の前にいて、理性が保てる男がどこにいるんだ?」
「…いや、まったくその通りだけども。けど、男としてその言い訳は情けない。」
まったくその通りだった。
「…まぁ、柚に隙があったのも事実だろうしな。未遂だったみたいだし、今回は多目に見よう。」
許してもらえたことにホッとしつつ、なぜお前に許しを貰わなきゃならないと気付いて苛立った。
…なんか俺、カッコ悪いな。
どうやら俺は、まずい所に深く浸りすぎたようだ。
なかなか抜け出せない、けれど心地いい場所に。
なんとも、運が悪い。
「お前が親友で、良かったよ」
「当たり前だ、バカ。」
本当に、運が悪いよな…。
「…優輔。少し長い、昔話に付き合ってくれないか。」
お前のことを信じるよ、優輔。
俺の、悪運の強さに免じて。