【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くん、大丈夫だったかな…。
あれから二日後の月曜、先生の説明を聞きながら暁くんのことを考えていた。
数学の問題の解説なんて、これっぽっちも耳に入らない。
ぐるぐると、暁くんのことだけが頭を回った。
二日酔いに効くって聞いたあさりのお味噌汁、飲んでくれたかな…。
暁くんが起きる前に優兄に任せて来ちゃったけど、大丈夫かな。
アルコール中毒になってしまったのかと、一応優兄を呼んだものの寝てるだけだと言われ、どれほど力が抜けたことか。
それに、暁くんのあの黒い瞳が、未だに頭から離れない。
いつもはカラコンをしていたのかな。
それとも黒目の方がカラコン?
それだけじゃない。
酔った暁くんがこぼした言葉が、ずっと気になっている。
あれは、本心?
それとも、酔って違うことを言っただけ?
わからない、わからないよ…。
窓のそとを見上げて、ふぅっとため息をついた。
「じゃあ、今日はここまで。」
「きりーつ、礼っ」
チャイムが鳴り、その日最後の授業が終わった。
あとは、数日後に控えた文化祭の準備だ。
「ゆーずっ、ため息なんかついちゃって。恋する乙女なのね?」
…優輝ちゃんったら。
思わず苦笑いすると、してやったり顔の優輝ちゃん。
「ところで、あのあと暁さんと話は出来たの?」
…あのことを、実は優輝ちゃんに言ってない。
けれど、緩く首を縦に振った。
ごめん、優輝ちゃん。