【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「そっか。…どうだったの?」
あまりにも心配そうに尋ねてくるものだから、大丈夫だよと伝えると優輝ちゃんはすごく喜んだ。
「そう!よかったっ。じゃあ、気兼ねなく文化祭準備できるね!!今日も頑張ろうね!」
ニッコリ笑う優輝ちゃんのお陰で、暗い気持ちがかなり飛んでいった。
***********
「メニューはこんな感じで十分ね!あとは本番に向けて練習するだけ。みんな、最後まで頑張ろうね!じゃあ今日はお疲れさまでした!」
メニュー開発担当チームのリーダーが、キリリとみんなをまとめる。
リーダーの鶴の一声で、みんな一斉に帰り支度を始めた。
「柚、あたしらも帰ろ」
うんっと頷くと、優輝ちゃんの笑顔が広がる。
そのまま二人で校門まで行くと、そこにいるはずのない人影が見えた。
え、嘘…あれって…。
「柚、久しぶり。」
いつものように、柔らかく微笑む暁くんがそこにたたずんでいた。
「…良かったね、久々のお迎え。」
こっそりと耳打ちする優輝ちゃん。
「じゃあ、あたし帰るね!またね柚!暁さんも、さようなら」
「ああ、気を付けてね。」
ニッコリ微笑んで手を振る暁くんに、一昨日までの面影はない。
まったくもって、普通の暁くんだった。
「柚、送るよ。今日は車じゃないけど、いいかな。」
あたしにもいつもの微笑みが向けられ、微かに困惑する。
けれど、いつの間にか頷いて暁くんの隣を歩いていた。