【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「だからね、心配しなくても大丈夫だよ。」
…どうして、そんな嘘をつくの?
どうして隠そうとするの?
何があるの?
じっと暁くんを見つめても、ただ彼はニコニコと微笑んで見つめ返してくるだけだった。
あんな辛そうな暁くんは今まで見たことがなかった。
おとといの、酔いつぶれて虚ろな目をした暁くんを思い出して胸が苦しくなる。
あのときの言葉は、なんだったの?
あの黒い瞳は?
薄暗かったけれど、でも確かにあれはいつものブラウンの瞳じゃなかった。
…もう、限界だった。
「…柚?」
“本当のことを教えて。”
「…なんのこと?俺は別に何も……」
もう一度あたしがケータイの画面を見せると、暁くんは僅かに表情を固くした。
“いつか、イギリスに帰っちゃうの?”
しばらくじっと画面を見つめていた暁くんだったけど、すぐに明るい笑みを浮かべた。
「そりゃあ…、実家も向こうにあるしね?いつかは帰るつもりだよ。」
“それは、また戻ってくるっていう意味で?”
「…どうだろうね。」
困ったような顔で、暁くんは微笑んだ。