【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
♪ カウントダウンは、刻々と
そして、いよいよ文化祭当日―――。
「いらっしゃいませーっ」
校内は、賑やかで楽しい雰囲気に包まれていた。
あたしは声がでないから接客は無理だろうと思って裏方に徹するつもりだったのに…。
「ええっ、裏方なんて勿体ない!!それ着て入り口に立ってるだけでお客さん呼べるって!」
「とりあえず、ニコニコ笑ってるだけでいいから着て!!」
そう言われ無理やり着せられたのが、フリッフリのミニスカートのメイド服だった…。
しかもなぜか妙に気合いが入った優輝ちゃんが、髪を巻き薄くメイクまで施してくれて。
ものすごく、恥ずかしいことになった。
昼から暁くんが来てくれるのに、どうしよう…!
かろうじて優輝ちゃんにだけそう言うと、優輝ちゃんは楽しそうに笑って
「可愛いんだし、いいじゃん。暁さんも喜ぶって」
と言い切った。
恥ずかしくて、恥ずかしくて。
女子のほとんどがメイド服だったけれど、あたしだけやたら似合ってない。
とりあえず、お客さんの呼び込みとして入り口で看板を持って突っ立っているという仕事が割り振られた。
うぅ、なんであたしだけ…
せめてあっちの長い方が良かった…。
衣装のメイド服には、ロングスカートのものと普通のもの、ごく数人しか着てないミニスカートのものがあって。
なぜかあたしはミニスカートの方だった。
そこはやっぱ、もっとスタイルよくて可愛い人に着せるべきだよ…!
という心の叫びを、誰も聞いてはくれなかった。