【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐



“ありがと、暁くん。”

ボードに書き込んだ文字を、暁くんに見せた。



「いえいえ、どういたしまして。」




暁くんも、にこっと微笑み返してくれた。




「あ、ちょっと悪いんだけどさ、今からギター取ってくるからここで待っててもらえる?」




そっか、そう言われてみればギター持ってなかったね。



家、ここの近くだから。

と暁くんは西の方を指差す。




ギター無いと困るんだから、引き止めたら悪いよね。


あたしは至って普通に頷いた。




「ごめんね。すぐ戻ってくるから。」




暁くんは、本当に申し訳なさそうな顔をして。



あたしは、大丈夫だからと笑って首を振った。




そうしたら、暁くんの顔にも若干、安堵の色が広がった。



最後に、本当にごめんねと頭をくしゃっとされた。




「オーナー!俺、ちょっと出ます!柚姫ちゃんのことよろしく頼みます!」



奥に引っ込んだまま出てこないオーナーさんに向けて声を張り上げると、はいよーっと明るい声が返ってきた。



暁くんは、じゃっ行ってくると優しくあたしに微笑みかけて小走りでライブハウスを出ていってしまった。





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