【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
大学でどうしても外せない講義があるとかで、暁くんはお昼からくるはずだった。
土曜日なのに、大変だよね。
だから、あたしもそれに合わせてシフトを入れてもらった。
とりあえず、それまではちゃんと仕事はしなきゃ。
じゃないと、延長とかされちゃったら困るもんね!!
覚悟を決めたあたしは、精一杯の営業スマイルで、道行く人に店を宣伝した。
と言っても、立ち止まってくれたり目があった人にどうぞ、という仕草をするだけだ。
これだけでも、結構入ってくれる。
さっきなんか、他校生の女の子に写真撮られたりしてすごく驚いた。
…意外と、楽しいかも。
だんだん慣れてきて、一生懸命やっていたときだ。
「柚っ、ちょっと来て!」
優輝ちゃんだった。
どうしたんだろうと首を傾げると、優輝ちゃんはどこから持ってきたのかリボンを持っていて。
もともとクルクルだったあたしの髪を器用に二つに結うと、それをリボンで留めた。
「よしっ、完璧っ!!」
完璧…、じゃないって!!
さらに恥ずかしいことになってるんですけどーーーっ!!
「リボン探すの、苦労したよー。なかなか持ってる人いなくってさぁ」
どうやら、色んなクラスの人に聞き回ってきたらしい。
どうしてそこまでして…、とあたしは項垂れた。
「ふっふっふ、これで客足も伸びること間違いなし!」
伸びるわけないじゃんっ
優輝ちゃんのばかぁ。
暁くんに余計会いにくくなっちゃったじゃん。
口を尖らすと、優輝ちゃんはいたずらっ子みたいに笑った。