【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「お前なぁ、みんな宮寐みたいな奴ばかりじゃないんだぜ?うまく生きろよ」
宮寐、という名前にどくんっと心臓が嫌な動きをした。
「その様子じゃ、まだ治ってないんだろ?大変だよなぁ、お前も」
そんな言い方…っ
「お前の為にも、さっさと忘れるべきだって。俺たちはその手伝いをしてやるって言ってんだよ」
「そうそう、此花ちゃん?」
今まで黙って成り行きを見ていた、もう一人の知らない男子も混じってきて、すごく嫌な感じだった。
知らないくせに、何にも知らないくせに!!
「っ………」
思わず口を開きかけたその時。
くりんっ、と体が反転して勢いよく男子から引き離された。
えっ?
そのまま、ふわりと抱き止められる。
「…悪いんだけど、この子先に予約してたの俺だから。諦めてくれる?」
この声は…。
「なっ、誰だよお前!」
「君らには関係ない。この子に勝手なマネは許さないよ。消えてくれる?」
う、うわ…
いつもの甘くて優しい声ではなく、キツイ威圧的な声にあたしまで鳥肌がたつ。
顔は見えなかったのだけれど、さぞかし冷たい顔をしているのだろう。
綺麗な顔の人ほど、怒るとすごく怖いと聞いたことがある。
現に、あの男子二人組は真っ青になっていてそそくさと逃げていった。
「…大丈夫かい?柚」
すぐにいつもの優しい声音に戻って、あたしもホッと胸を撫で下ろす。
こくりと頷いて離れると、ニコッと柔和な笑みを浮かべている暁くんと目が合った。
“ありがとう”
携帯の画面を見て、どういたしまして、と暁くんは微笑んだ。