【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
あれ?でも、暁くんが来るのはもう少し遅い時間だったはず。
どうしてもういるんだろう…?
じっと暁くんを見上げていると、視線に気付いた暁くんはふわりと笑った。
「可愛いね、柚。文化祭の衣装なの?」
………はっ!!
わ、忘れてたぁっ!!!
脱兎のごとく逃げ出し、お店の扉に体を隠す。
「どうして逃げるの?」
クスクスと笑う暁くんはきっと、あたしの思っていることなんてお見通しなのだろう。
それでもわざと聞いてくる辺り、意地が悪い。
「それ、優輝ちゃんがやってくれたのかな?器用だね、彼女。」
そこまでお見通しだなんて、いつから見てたんですかと聞いてしまいたくなる。
「可愛いから観念して出ておいで。大丈夫、俺が保証する。」
そっと顔を出すと、楽しげに微笑む姿があって。
あ、やっぱりからかわれてる?とかおもってしまった。
それにしても今日の暁くんは一段とカッコいい。
周りの女の子が暁くんを見て、カッコいいって噂してる。
シャツにジーンズというシンプルな出で立ちではあるけど、背が高くて手足も長いからすごい存在感で、逆にそのシンプルさがちょうどいい。
ボタンを大きく開けた胸元がほんの少し見えて、なんだか色っぽくてくらくらしてしまうほどだ。
鎖骨で光るシルバーアクセサリーは、以前にあたしがあげたもので。
ああ、付けてくれてるんだと嬉しくなる。
「…そう、いい子。おいで」
その声と目には逆らえなくて、しぶしぶ出ていくと暁くんは嬉しそうに目を細めた。