【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「出店の方はもういいの?」
あ、そうだった…。
“ごめんなさい、まだなの。暁くんがこんなに早く来てくれるなんて思わなかったから、シフトはもう少し…。”
「そっか、ごめんね。講義が急に休講になったから、驚かせようと思って早く来すぎてしまったね」
暁くんは悪くないよ、と急いでかぶりを振ると、暁くんはしばらく考え込んだあと楽しげに笑った。
「じゃあ、お店のなかで柚の仕事の様子を見てるよ」
ええっ!
どうやら本気らしく、軽い足取りで中に入っていく。
入ってすぐ、女子の黄色い歓声が聞こえた。
暁くんって、どこに行っても注目の的だよね。
しかも本人は自覚が薄いような気がするし。
「柚、柚っ。暁さん来てるね!」
そう声をかけてきたのは優輝ちゃんだった。
「さっき委員長に聞いてきたんだけど、柚頑張ってたしシフト早めに切り上げても構わないって」
えっ、嘘!
「せっかく早めに来てくれたんだから、楽しんでおいでよ。」
優輝ちゃん…。
暁くんの方をちらりと見ると、優雅に長い足を組んでティーカップを傾けていた。
教室の一角だというのに、ものすごく絵になるのはどうしてだろう…。
「ねっ!いっておいで」
“ありがとう、優輝ちゃん。”
でも美味しそうに紅茶を飲んでいるから、飲み終わるまで少し待っていようと思ったとき。