【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





「あのぉー、すみません。Rainのアキラさんですよね?」




「俺らのこと知ってるの?」




「きゃーっやっぱりーー!!」




え…?




女の子数人が騒ぐ声がして目を向けると、暁くんを取り囲んで興奮ぎみの様子だった。




「あたしっファンなんですー!!いつもライブ見に行ってて…」




「嬉しいな、ありがとう。」




ニコッ、と暁くんが微笑むとみんなでキャーキャー騒いで喜んでいた。




…なにあれ。




「最近、ヴォーカルやってますよね。ベースも良かったけど、ますます好きになりました!」



好き、なんて簡単に言わないでよ…。




「握手、してください!」




「俺で良ければ。」




暁くんも、簡単に優しい顔しないで。




「大好きですっ!これからも応援してますっ頑張ってください」




「ありがとう、また見に来てね」





…あたしだって。



言えるのなら、言いたいよ…!


ずるい、そんな簡単に大好きとか。



あたしが言いたくて仕方ないことを、あんなあっさり。




そんなとき、ふいに暁くんと目があった。



暁くんはニコッ、と微笑むのだけど、あたしは思わず目をそらしてしまった。




暁くんに嫌な子だと思われちゃったかな。



あたし、バカみたい。




別に暁くんが告白されてるわけじゃないのに。



付き合ってるわけでもないし。


それに、あたしだってAriceやってた頃に色んな人に大好きとか言われてたじゃん。



歌が好きって、言われてるだけじゃん。



冷静にならなきゃ、冷静に、冷静に。






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