【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
…ってか、今考えたらなんか気まずいよね。
あたし、どうしたらいいんだろ。
「ったく、あの野郎。紅茶が冷めてしまうじゃねーのよ。」
ぶつぶつと文句をこぼしながら、奥から出てきたオーナーさん。
両手には、湯気の立ち上るティーカップがあった。
「はいどうぞ、お嬢さん。原田俊樹特製のアールグレイ。冷めないうちに。」
キザな仕草であたしの前へ置かれた紅茶。
ペコリ、と頭を下げて口をつける。
ってか、さっきも飲んだばかりだけど…。
暁くんって筋金入りの紅茶好きなのかな。
そんなことを思いつつ、熱い紅茶を口に含む。
「…!?」
おっ、美味しいっ!
これめちゃめちゃ美味しい!!
「どうだ、美味いだろ。」
原田さんの言葉に、こくこくと頷いた。
それを見て、原田さんは満足げに口角をあげた。
「だろ。あのアキ御用達の紅茶だからなぁ。わざわざ茶葉から淹れてるんだぜ。」
茶葉から!?
すごっ!
しかもアールグレイって、超高級品じゃなかったっけ!?
や、やばい…。
高そう…。