【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「あれ、柚姫ちゃん?」
あたしが原田さんに頼まれたのは、ここの掃除だった。
そしてモップがけを始めてすぐ、息を切らせた暁くんが戻ってきた。
暁くんがいなかった少しの間に、何があったのだろうと思ったに違いない。
その端正な顔を、ぽかんとさせている。
そんな暁くんに、原田さんは気楽に声をかけた。
「おー、アキ。早かったな」
「あぁ、すみませんでしたオーナー。突然柚姫ちゃん置いて出ていっちゃって。」
「いや、それはいいんだよ。むしろ可愛い子は大歓迎だ。」
なんて冗談を口にする原田さん。
あたし、別に可愛くなんてないのに…。
「柚姫ちゃんも。ごめんね?」
全然だよ、と笑って首を振って見せたら暁くんも少しだけニコッと笑ってくれた。