【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
これの説明をしてもらおうと、もう一度エドガーさんを見上げた。
「それ、なんだかわかるかい?」
わかるわけない。
あたしに、この手紙が何の関係があるというの?
戸惑ったあたしに、エドガーさんは予想もしていなかった答えをした。
「それ、招待状なんだよ。暁とジェシカの、結婚式の」
ドクン…っ
え…?暁くんと、ジェシカさんの……
「君には暁も思い入れがあるようだからね。是非とも二人の晴れ舞台をみてもらおうかと思ったんだよ」
この人…っ
ようやく癒えかけてきた傷が、再び開き出す。
「式は来週だ。それまでにイギリスへ君を招待しよう。」
行けるわけがない。
ましてや、パスポートがないのだから。
招待状を突き返し、頭を軽く下げる。
「そう。行かないって言うんだね、レディ?」
二人の結婚式を見られるほど、あたしも傷が癒えてない。
行けば傷口に塩を塗ることになるのは、間違いない。
「レディはわかってないね。僕がなぜ、たかが手紙を届ける為だけに遥々日本まで来たと思ってるの?」
ふ、と浮かべた強気な微笑みに、思わず一歩後ずさる。
「悪いけど君に拒否権はないから。…僕はね、レディ。君をさらいに来たんだよ」
なん…っ!?
はっ、とあたしが我に返った時にはギルバートさんに腕を柔らかく掴まれていた。
「(ギルバート、大切な客人だ。丁重にもてなせ)」
意味のわからない言葉が、あたしをさらにパニックに陥らせる。
どうして…どうしてそこまであたしを…!