【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
「僕にも、どうしても欲しいものがあってね。その為には君が必要なんだ。」
エドガーさんの、欲しいものって…。
「パーティー用のドレスは僕が用意しよう。必要な物も言ってくれれば買い揃える。」
そんなことはどうでも良かった。
逃げようと試みるも、どうもうまく逃げ出せない。
「手荒な真似を、どうかお許しを。そのお詫びと言ってはなんですが、アフタヌーンティーに興味がおありだと聞きましたので、本場から一式持って参りました。」
わざとらしく、そう言って頭を下げる姿は悔しいくらい様になっていた。
おとぎ話の王子さまのような立ち振舞いなのに、中身は最低最悪。
近くに止めてあった黒いリムジンに乗せられそうそうになり、あたしはイヤだと首を振る。
行きたくなんてないのに、会いたくなんてないのに…。
――――嘘、会いたいの…!!でも、会えないの!!
心の声は、正直だった。
ぎゅっと目をつぶり、涙を堪える。
暁くん…――――!!
「―――…柚!!」
はっ、と目を見開く。
なんで、どうして。
聞き間違えるはずがない。
ずっと、待っていた声。
望んでいた声。
道路の反対側に、ずっと会いたかった人が、そこにいた…。
「エドガー!どういうつもりだ!柚から離れろ!!」
「おぉ、すごい怒ってる。けどおかしいなぁ、どこから漏れた?」
暁くんはものすごい怒鳴っているのに、エドガーさんは楽しげにカラカラと笑った。
ちょ…、なんなのこの人…