【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐









――――とんっ…





え…?





その時、背中に感じた小さな手。



身体は前に押し出され、暁くんの手があたしの手を、今度はしっかりと握りしめた。




ドサッ!




その勢いのまま、あたしの身体は暁くんと共に歩道に倒れ込む。




「…っ」




下で、暁くんが小さく呻いた。





…あたし、助かった?




悩んだのは、一瞬だった。



どうして助かったのかを思いだし、一気に血の気が失せる。




慌てて後ろを振り向いた。




けれどどこを見渡しても、それらしい人は無かった。




…じゃあ、あの手は。




あたしより、ちょっとだけ小さかったように思う。




優しい、あたしがよく知る手のような気がするのは、あたしの考えすぎなんだろうか…。







「…んっ、」




うめき声に、ハッとあたしも目を向ける。



うっすらと、ブラウンの目が開かれて、あたしの目頭まで熱くなる。





暁くんが…。




良かった、良かった…!!



ぶわっと涙があふれ、ポタポタと顎を伝った。







「…ゆ、ず」




「…うっ、あ……」






「…柚の声、すごく綺麗だね」





「うっ…わあぁぁぁんっ暁くんのバカァ!わああああっ」





…この時あたしは、三年ぶりに大声を出して泣きじゃくった。



そんなあたしを、暁くんはそっと抱き締めた。








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