【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
暁くんの病室は、一人部屋だった。
そばの椅子にそっと腰を降ろすと、暁くんの右手をきゅっと握った。
…温かい。
そこに、命の律動を感じる。
「ん…ゆ、ず」
ピクリと身動ぎしてそう漏らしたかと思うと、再びすぅすぅと寝息をたて始めた暁くん。
起こしてしまったのかと思ったけれど、大丈夫みたいだ。
ホッと力を抜き、じっと暁くんの寝顔を見つめる。
相変わらず、キレーな顔…。
しかも、寝顔がまた可愛い。
…あんなに、会いたくて会いたくて。
思いこがれた暁くんがこんなに近くにいるのに、どうしていいのか正直わからない。
あの事故のとき、そこにいたのはあたしのよく知る暁くんの方で、もう前のように接してもいいのかなと思っている。
けれどその反面、また拒絶されるのが怖かったりする。
どうしたらいいんだろう…。
暁くんの気持ち良さそうな寝顔を見ながらそんなことを考えていたら、なんだか段々眠くなってきて。
いつの間にかあたしまで、深い眠りの中に落ちていっていた。
暁くんが、起きたら、考えよう…―――。
それだけ、決めて。