【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
オルドリッジは、イギリスに古くからある名家の血筋だ。
かなりの領地を持っていた伯爵家だったとかなんとか。
よくは知らないが、イギリス貴族の血を引くらしい。
そんなオルドリッジ家に産まれたのが、俺の母さんのアイリスだった。
イギリスと日本のハーフで、チョコレート色の髪とエメラルドグリーンの瞳がよく似合う優しい人だった。
母さんは、誰からも愛される美しい女だったと誰もが口を揃えて言う。
けれどそんな彼女がある時、日本人の男を連れてやってきた。
それが俺の父親、桐野 旭輝(キリノ アキテル)だった。
母さんの兄、つまり俺の叔父は反対をしたが、結局二人は結婚。
そして産まれたのが、俺だった。
しかし、誰もが俺の出生に絶望することになる。
なぜなら俺は、“あってはならないもの”を持って産まれてきたから。
血筋を重要に思う家は、なにより血筋が絶えるのを恐れる。
まさに俺は、その血筋を絶やすと先祖代々伝えられてきた存在だったのだと。
オルドリッジ家は考えた。
そんなのは迷信だと割りきるか、それとも悪の芽は摘んでおくか。
そして、結局俺をオルドリッジから切り捨てるという結論に至った。
それに抗議したのは、俺の両親だった。
結局、二人はオルドリッジを納得させることが出来ず、二人で俺を連れて日本へ渡った。
俺を守るが故の選択だった。
その四年後、沙夜が産まれた。
俺も沙夜も、両親からたくさんの愛情をもらって日本で幸せに暮らしていた。
だが、あの事件が起きた。