【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐
そんなあたしを嘲笑うかのように、風はひらひらと紙を乗せて流れてゆく。
「やだ…!」
「ちょ…っ、柚!?」
遠くで、アキちゃんの声が聞こえた。
だけど、追うのに必死なあたしは、振り向くこともその次の言葉に耳を傾けることもしなかった。
あのとき、止まっていればって、後悔し続けることになるとは露ほどにも知らず。
ようやく風が収まり、紙はゆっくりとあたしの手の届く位置へと降りてきた。
やった、よかった…!
心からそう喜び、一生懸命手を伸ばす。
手を一瞬かすっただけで、ギリギリのところで届かず、紙は数メートル先へと着地した。
あたしは嬉々として、再び風の吹かぬ間に身を屈めて紙を拾った。
その手に紙の感触を感じ、ホッとしたその刹那。
「―――…柚!!」
え…っ
アキちゃんの、悲鳴に近い声が辺りに響いたとき。
あたしの目の前には、大型トラックが猛スピードで突っ込んできていた。
…あたし、死んじゃうの…!?
あたしは、死を感じた。