【完】Lost voice‐ツタエタイ オモイ‐





ジェシカ・美麗・オックスフォード。




彼女がその婚約者だった。



すぐに結婚するよう、迫られた。




だけど交換条件で、四年間日本の大学へ行かせて欲しいと頼んだ。




その代わり卒業したらすぐに結婚すると。




オルドリッジは、その条件を飲んだ。




けど数ヶ月前に突然、ジェシーが結婚を早めようと言い出し、ついに俺はもう誰も納得させることが出来なくなってしまった。




そして、二ヶ月前のことに至った…――。








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「…これが、俺の昔の話。」




正直、なんて言っていいのかわからなかった。




これが、暁くんの…。




あまりに辛かった。




ところどころ簡略にされていたけれど、その長い間の苦しさや辛さが、想像以上にひどいということが伝わってくる。




「…泣いているの?」




あたしの目に涙が溜まっているのに気付いたのだろう。




暁くんは哀しげに微笑んだ。




…その微笑みの裏に一体どれだけの傷を隠しているのだろう。



泣きたいのは暁くんのはずなのだからあたしが泣くわけにはいかなかった。




「…ないわけじゃないんだ、オルドリッジと縁を切る方法が。」




フッと暁くんが瞳を陰らせる。



「ただ俺が、オルドリッジに対抗する勇気が無かった。君を傷付けてしまう前に両親のように戦っていれば良かった」





そんなのは、簡単じゃないはずなのに暁くんは、決意してくれた。




あたしはそんな暁くんに何をしてあげられるだろう。





「柚、もうひとつあるんだ。俺の秘密は」




え…?




「俺が持って産まれた、あってはならないもの。それが…」





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